本日は私の生徒さんの大澤さんの作品をご紹介します。F20号の大作油彩です。
この作品を描くために大澤さんは大変な苦労をなさいました。
元々のモチーフはこんな感じです。壊れた石膏像のメディチをメインに、ワイン・フランスパン・グラス・食器・赤と黒の布などをアレンジしました。
何といっても壊れた像の顔の部分を宙に飛ばして加えたのが素晴らしいです。美しいメディチの表情がこの断片に感じられます。
また、右のバックはルネサンス時代の建築の回廊を再現。その前の液体の入ったグラス、細部まで凝った造りのナイフとフォーク、フランスパン、ワイン瓶とそのラベルの描写が見事です。
左のバックはポンペイ壁画を参考にしています。
この壊れたメディチのすさまじい描写力!頭部に鳥がいるのに気付かれましたでしょうか。
美しい赤い布の装飾です。右下の”Osawa” のサインも装飾的です。
黒の布にも独特な装飾が描かれ、不思議な「手」も見えます。石膏像の台座には古代ギリシャのレリーフも見えます。正に色々な「美」を総合させようという大澤さんの意気込みが感じられます。
大澤さんは女子美術大学絵画科洋画専攻のご出身ですが、その確かなデッサン力があってこその表現になりました。これは決して「細部にこだわっている」のではありません。「細部を必要とした表現」なのです。その差がわからなくてはいけません。
「数十年のブランクを経ても精力的に制作出来る」などのレベルでもありません。なぜならばそれは前提であり、目的ではないからです。
大澤さんはキリコその他シュルレアリスムの画集や、様々な古典のコンポジションを研究して遂にこの作品の完成に至りました。これからも回りに惑わされない、魅力のある作品を楽しみにしています!