こんにちは小屋哲雄です。
今日は「輪郭線について その1」の続き「その2」です。
前回は「対象物に単調な輪郭線は無い」
「漫画のような輪郭線は物にはない。」
「単純な線で囲って形を現わしてはよくない。」
しかし、「距離感、位置のある輪郭線はある!」
というお話をしました。
みなさん、この事についてイメージされましたでしょうか?
例えばモチーフを描く場合、描き出しでその形を単調な線でくくって
描いてしまうことが多いです。
しかし、どんな物にも部分、部分に「距離」が存在します。
遠いところも近いところも
同じ強さの線で描いてしまったら距離感が出ません。
すなわち、空間も出ません。
お分かりでしょうか?
では、実験してみましょう!
用意するものは
1.落書きをしても良いモチーフ
2.カラーマーカー5色くらい
3.鉛筆
4.スケッチブック
以上です。
1番の落書きしても良いモチーフとは、
してもいいなら何でも良いのですが
ある程度複雑な形のものが良いです。
人形や、輪郭の複雑な
置物がいいのですが落書きしてしまうので
そういうものを100円ショップなどで買ってきましょう。
それなら安心です。
今回は「くまの貯金箱」を使ってみました。
さて、やり方ですが、
まず、自分の手の届くところにモチーフをセットします。
そして、スケッチブックに鉛筆でそのモチーフを描くのですが、
この実験ではわざと均一な線で、漫画のような
輪郭線で囲ってみて下さい。
そして、紙に少し輪郭線を描いたらその同じ部分に、マーカーで
モチーフに線を引いて下さい。
毎回色を変えて5~6色使うと
更に分かり易いです。
紙にモチーフの輪郭を取り終えて、モチーフにもマーカーのラインを
引き終えたら終了です!
正面からはこんな感じになります。
ではマーカーでラインを引いたモチーフを見てみましょう!
モチーフを左右の横から見て下さい。
上から見て下さい。
下からも見て下さい。
さて
マーカーの線はどこにありますか?
全部同じ位置で線は連続していますか?
きっと違うと思います。
「全部違う位置で、線は分断されている」のではないでしょうか?
デッサンはこのようになります。
この実験から、
「モチーフの輪郭線にはそれぞれ距離があり、
しかも線は連続ではなく分断されている。」という結果が出ます。
ということは・・・
絵を描く最初の段階で描く輪郭線が、
距離のない連続した線
だったとしたら、
何と!全く正反対の事をしている事になります!
だから、正しくないのです。
1971年に芸大出版会から出版された「素描論」
で、著者の岩田弥富氏は
「石膏像のラボルトの正面からの輪郭部を
向かって左横から見ると見る位置からの距離が
それぞれ異なっていることが分かる。
しかも輪郭部は必ずしも連続している訳ではなく、視点から
の直線で連続しているように見えるが、不連続線で
出来上がっている。
このことから輪郭線を連続したニュアンスの無い
線で描くのは誤りであると言える。(中略)
こうした輪郭部を描く時、公式的に
言うならば、『近い位置にある面は強く、遠い位置にある面は
弱く』表現すべきである。」
と述べています。(p82~83)
(『』は小屋による)
いかがでしたでしょうか?
「絵画における輪郭線」の事がお分かり
頂けたら幸いです。